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人の体の中で、おなかと胸とを分けているドーム状の膜を横隔膜といいますが、食道裂孔ヘルニアとは胃の一部がこの横隔膜を通して食道の方にとびだしている状態をいいます。通常はこの横隔膜の括約筋の作用で胃の内容物が食道の方へ逆流することはありませんが、食道裂孔ヘルニアではこれが障害されるため、ゲップや胸焼け、胸の不快感など、いわゆる逆流性食道炎の症状が現れます。この食道裂孔ヘルニアやその結果としておこる逆流性食道炎も、最近の高齢化社会を反映して注目されるようになりました。その理由は、この病気が高齢者に多いためというだけでなく、胸の不快感や息苦しさ、さらには胸の痛みなどが狭心症とまぎらわしい症状であるからです。
食道裂孔ヘルニアは通常バリウムによる透視や胃の内視鏡検査によって容易に診断されます。胃の一部が食道裂孔というくびれよりはみ出しているのが観察されます。食道の粘膜にビランなどの炎症を伴っていることもありますが、検査の際はやはり癌の合併がないか、注意深く観察致します。また、食道裂孔ヘルニアにはいくつかのタイプがあるので、検査でそれを確認することが治療上必要になります。
治療では、ほとんどの場合、胃酸を抑える薬や胃の粘膜を保護する薬、あるいは胃や食道の運動を促進する薬が有効です。手術は重症の場合にしか行われません。食事のあと食道への逆流を予防するために、食後は座ったまましばらくゆっくりしていること。また症状がひどい時には、夜上半身をやや高くして睡眠をとることを勧めたりします。
食道裂孔ヘルニアは、食道と胃の境界の部分が胸の方にずれてしまい、胃酸が食道に逆流して食道炎を起こしたり、食べ物が通りにくくなり、吐いたりする病気です。ほとんどの場合は薬で調節できますが、ひどい場合は手術が必要です。以前、この手術はおなかを大きく切っていましたが、現在では3~10mmの4~5ヵ所の傷で、おなかの中に細長いカメラや手術器具を入れ手術をすることができるようになっています。小さな傷のため、痛みも少なく回復も早い利点があります。
ただやはり一般的な場合、多くの医者は内科的に治療を完結させようとします。手術で人間の体にメスを入れるということは、それだけでリスクを伴う作業であり、麻酔をかけて体内に器具や外科医の手を加えることで、術中は勿論、術後にどんな合併症が待ち受けているかもしれません。ですから、ヘルニアのような良性疾患に対する手術適応は、より慎重に判断せざるを得ないのです。
こうした背景から、ヘルニアに対して手術が行われるのは、
(1)胃内容逆流による誤嚥が多い(高齢者、寝たきりの人に多い)
(2)食道炎、食道潰瘍が内科的治療抵抗性
(3)出血や狭窄を起こしていて内科的に治療困難
(4)稀なタイプのヘルニアで、胃が飛び出した孔に締め付けられて阻血を起こしそうな場合
の4つが主です。(1)(2)の場合は、とびだした胃を腹腔内に引き戻し、更に食道も腹腔内に引きずり出してそのまま胃袋のなかにめり込ませ、めり込ませた部分を胃ごと縫い合わせる(Nissen手術、Toupet手術)方法が中心です。最近では上述の通り、大きく腹を切らなくても腹腔鏡手術によって1週間程度の入院で出来る施設も増えているようです。(3)の場合は、問題となる病変部を切除する方法がとられることもあります。(4)は命に関わりかねないので緊急を要しますが稀なものです。
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